出来るだけ理想的に生きたい

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読書感想 殺人出産

殺人出産 村田紗耶香 

 

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コンビニ人間の作者の作品。

表紙はカタツムリの女性だと思ったけどよくよく見たらキノコだな、これは。

コンビニ人間は読んだことあるけれど、あれはイカれた人間の視点だったから、違う作品だったらまともな話かもしれないと思って読んでみたけどこれもめちゃくちゃ尖った作品だった。

 

・殺人出産

舞台は21XX年。殺人は悪だが、子供を10人産んだのちの殺人は許される世界。

人口が減少した現代では子供は個人の資産ではなく人類の資産であり、産む行為は何よりも尊いとされる。

この世界では虫スナックが流行していて作中では蝉とか蝙蝠とかトンボを食べてる描写がしょっちゅう挟まる。

スタバで虫をサラダやホイップでお洒落に盛り付けてバクバク食べてる女子達が微妙に気持ち悪いんだけどちょっと在り得そうだなと何とも言えない気持ちになった。

もし現代でも蝉に高いアンチエイジング効果や数多の美容効果があることが立証されて海外のセレブが食べ始めたらみんな普通に食べるだろうな。

石原さとみとかがオシャレに食べて「綺麗は虫から!」なんて宣伝したらきっと私も食べてしまいかねない。

実際にミドリムシを健康食、ユーグレナとして食べるといいって話はあるし、そもそも食品を染めるのにも虫が使われているんだけどね。

流行っている物にカワイーッて言いながら何でもしてしまう女子たちに作者は奇妙さとか滑稽さを普段から感じていて、「こいつら流行なら何でもするんじゃなかろうか」と考えて虫を食わせたんじゃないだろうか。

そういえばきゃりーぱみゅぱみゅが流行った時もグロ可愛いって流行ってたけど眼球の指輪とか血まみれのマネキンのピアスとか、正気の沙汰ではないグッズが竹下通りでわんさか売っていたなぁ。

そう思うと虫の流行などかわいいものかもしれない。

死刑が廃止されて産刑になり、子供を産み続けなくてはいけないという制度はちょっと感心してしまった。死系は人口を減らす非効率な行為だが、産刑は命を作ることができて効率的だって説明に一瞬うっかり納得しかけてしまった。よくよく考えるとその理屈はおかしい。

子供を産む描写、5人産んで衰弱したり出産し過ぎて死んだ人がいるシーンがあったけど麻酔とかして産まないのだろうか。人工子宮で男が主産できるような超未来的なシステムがある割には結構大変そうだ。

人に抱く殺意がどれほど激しくても一過性のものである、とか、正しい世界の概念は世代によって変わるとか、所々説得力のあるところがあって確かに……と思えてしまうところもあった。

でも自分の世界の常識とは違うところがあり過ぎて狂ってるようにしか見えなかったっすね。 

 

・トリプル

現代のコーコーセーは二人で付き合うカップルじゃなくて三人で付き合うトリプルが流行ってる。アタシもトリプルで付き合ってる。トリプルのセックスは修行僧のようにひたすら苦痛に耐えるの。カップルのセックスとか獣みたいでありえないよね。アタシはこの三人で清らかに正しく生きます☆

って感じか。

これも作者が漠然とどうしてカップルって2人なんだろう……

っていう世間の当たり前に対する疑問から生まれた話じゃないだろうか。

 

 ・清潔な結婚

性的関係を持たず、兄弟のようなクリーンな関係を求める夫婦の話。

性的嗜好と結婚、この二つが上手く両立できるのか、という疑問は自分も考える話なので若干共感できるところもあった。

よくある感じだと仲の良い偽装夫婦みたいな感じだろうか。

2人は兄弟のような関係なので結婚はしているけれど恋人を他に作って遊んだりする。

共に生活する上では最適なので別れたりはしない。

これはラブコメではないので二人に性的な愛情が芽生えたりもしない。

ちょっとこの生活は合理的かも……でもなあ……と思わせられるような話。

 

・余命

死んでも蘇生できる世の中になったので好きなような死に方をします!

っていう話。短いので最後に丁度良かった。

 

コンビニ人間も狂ってたけどこれも普通に狂ってやがった。

世の中の当たり前に対する純粋な疑問が時として狂気に映ることがあるんだな……

この本の登場人物は皆淡々として、人との触れ合いを全て生繁殖とか性欲解消とかそういった人間の仕組みのシステムとして捉えてそうだ。

恋愛ものを書いたらどうなるのか気になった。