読書感想 異邦人
カミュ (著), 窪田 啓作 (翻訳)
異邦人、手に取る度に久保田早紀の歌が流れてきて大変だった。
日本人は異邦人という文字を見るとこの曲が流れてくるように出来ているんだと思う。
これ、翻訳のせいもあるのかもしれないけれど自分、主人公を途中まで夫人だと思って読んでた。
主人が~とか言い出すから主人=旦那だと思っていた……
ルムソーも女性名か男性名か分かりづらいし。
なので途中でマリィに主人公がムラムラし始めたのでレズなのか!?と驚いたし男だと理解した後も主人がいるってことはゲイなのか!?と混乱した。
とんだ勘違いをしてしまった。
翻訳が直訳過ぎて分からない部分も多々あった。
マリィはブイの上に乗った
という一文とか。何の上に一体乗ってるんだ。
こんな図しか浮かばなかったぞ。
調べたら浮袋のことだったらしい。
どうしてティーカップを茶碗と翻訳するのにブイは浮袋と訳さないんだ……
読んでみて初めに思ったこと、
これ、コンビニ人間と同じ思考回路の人間だ……
ルムソー、人に対する共感力が圧倒的に欠けている。
ルムソーは母の葬儀をどうでもいい……って態度で参加したり、自分の彼女が死んだと思った途端に彼女に対する興味を失ったり、善悪の区別を付けずに人に接し、行動したりして無感情に生きている。
自分に好意を持っているマリィに対して君を愛していない、と答えたり風俗女の斡旋を仕事とする男と親しくしたり、序盤、彼に対する感情は決して良いものではない。
だが彼は自分に正直で決して計算高くない。自分の感覚だけを信じ、神は信仰しない。
たとえ、ウソでも神を信仰すると言えば命が助かったとしても彼は言わない。不利になることでも、笑われることでも正直に本当のことを答える。
読んでいて正直すぎるがゆえに裁判がどんどん不利になってゆく彼に同情をしたし、ただ彼は平穏に生きたいだけだったのに……と気の毒に思えたし、読後もしばらくそう思っていたけれどよくよく考えてみるとルムソーは母親の死んだ日に面倒そうに葬儀に出てさっさと帰って娯楽映画見て女と遊んで、風俗斡旋業のチンピラの友人とはチンピラ男を裏切った女をボコボコに痛めつける手伝いをしておいて知らん顔したりして全然行動に同情出来ないな。
これ、殺したのがアラビア人の男だからあまりその殺人について問われないけれど殺したのが子供だったとしてもルムソーは反省もしないんだろうなと思ったら彼に共感できなくなった。
そもそもチンピラ男を手伝わなければチンピラ男の彼女の兄弟であるアラビア人男に付け狙われることもなかったし割と自業自得でにあるな。
彼の主観なので被害者みたいな書かれ方をしているけれど彼を有罪にしようと糾弾する検事の言い分も分からなくもなくて、ルムソーは良心の呵責が無いから彼に対して恐怖を覚えるのも仕方がない。
最後のルムソーが神父にブチ切れるシーンは彼が平穏を望むのに世間に生きられない男だという感じがしてとても良かった。
この感想書いてたらまた異邦人が頭の中に流れ出してしまった。